急性単純性虫垂炎の初回治療として抗菌薬治療を受けた成人患者を10年間追跡したところ、組織病理学的所見に基づいて確定された虫垂炎の再発率は37.8%、虫垂切除術の累積施行率は44.3%であったことが、フィンランド・トゥルク大学のPaulina Salminen氏らが実施した「APPAC試験」で示された。著者は、「成人の急性単純性虫垂炎患者の治療選択肢としての抗菌薬治療を支持するエビデンスだ」とまとめている。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月21日号で報告された。
抗菌薬治療の10年再発率―事前に規定された2次解析
APPAC試験は、フィンランドの6施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験(Sigrid Juselius Foundationなどの助成を受けた)。2009年11月~2012年6月に、年齢18~60歳、CT検査で合併症のない急性単純性虫垂炎と診断された患者530例を登録し、虫垂切除術を受ける群(273例)または抗菌薬治療を受ける群(257例)に無作為に割り付けた。
今回は、事前に規定された2次解析として、抗菌薬治療群における10年間の虫垂炎再発率に焦点を当てた検討を行った。
抗菌薬治療は、ertapenem sodium(1g/日)を3日間静脈内投与した後、レボフロキサシン(500mg、1日1回)+メトロニダゾール(500mg、1日3回)を7日間経口投与した。
事前に規定された10年時の副次エンドポイントは、抗菌薬投与から1年以降の虫垂切除術と虫垂炎再発率、および合併症(10年の追跡期間中に発生したすべての有害事象を含む)であった。また、事後解析として、抗菌薬治療群で虫垂切除術を受けた患者または虫垂が温存された患者において、MRIを用いて虫垂腫瘍の可能性を評価した。
10年間の合併症発生率は有意に低い
抗菌薬治療群の257例のうち、253例(98.4%、年齢中央値33.0歳[四分位範囲:26.0~47.0]、女性102例[40.3%])を虫垂炎再発の評価対象とした。10年後までに8例が死亡したが、いずれも急性虫垂炎とは関連がなかった。
10年の時点における真の再発率(組織病理学的に確定された虫垂炎の発生率)は37.8%(95%信頼区間[CI]:31.6~44.1)(87/230例)であった。また、累積虫垂切除術施行率は、1年時が27.3%(22.0~33.2)(70/256例)、5年時が39.1%(33.1~45.3)(100/256例)、10年時は44.3%(38.2~50.4)(112/253例)であった。
一方、10年累積合併症発生率は、虫垂切除術群が27.4%(95%CI:21.6~33.3)(62/226例)であったのに対し、抗菌薬治療群は8.5%(4.8~12.1)(19/224例)と有意に低かった(p<0.001)。
10年後の全体の腫瘍発生率は1.2%
抗菌薬治療群のうち10年後にMRI検査を受けた102例では、虫垂の炎症所見を認めた患者はいなかった。腫瘍が疑われたため虫垂切除術を受けた2例では、組織病理学的評価で低悪性度粘液性腫瘍(LAMN)を認めた(0.9%[2/212例]、いずれも追加治療は不要)。虫垂切除術群では、272例中4例(1.5%)で、1年後に虫垂腫瘍がみられた(神経内分泌腫瘍3例、低異型度腺腫1例)。腫瘍の発生率について、両群間で統計学的に有意な差はなく(p=0.70)、合併症を伴わない急性虫垂炎における10年後の全体の腫瘍発生率は1.2%(95%CI:0.3~2.2)(6/484例)ときわめて低かった。
EQ-5D-5Lで評価したQOLは、両群間に有意な差はなかった(p=0.18)。虫垂切除術群の78.0%(167/214例)と抗菌薬治療群の67.3%(111/165例)が、再度同じ治療を選択すると回答した。
著者は、「抗菌薬治療群における真の再発および虫垂切除術は、その多くが初回発症から2年以内に発生し(それぞれ、65/87例[74.7%]、87/112例[77.7%])、10年後の時点で抗菌薬治療の効果は持続しており、大部分の患者でそれ以上の再発は認めなかった」「将来、抗菌薬による外来治療が普及すれば、総費用と医療資源の節約効果が顕著に増加する可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)